今回は、GarminのGPS搭載ABCウォッチ、fēnixについて書いてみたいと思います。
フライトコンピューターやGNSS Flight Recorderについては別に記事を書いてみようと思っていますが、ここでは日常生活とオーバーラップして使えるデバイスとして、GPS搭載のABCウォッチ、特にGarminのfēnixシリーズについて紹介します。
【GPSとは】
アメリカ合衆国が開発した「GPS」(Global Positioning System)、すなわち「全地球測位システム」のことを指します。複数の衛星からの信号を同時に受信し、その差分に基づきその時点での地球上の位置座標を特定するという仕組みです。
日本の「みちびき」、ロシアの「GLONASS」、ヨーロッパの「Galileo」、中国の「北斗衛星導航系統」などといった各国で整備を進めている異なったシステムが存在するため、総称としては「GNSS」(Global Navigation Satellite System)、すなわち「全球測位衛星システム」(※)と呼ばれます。デバイスによっては、複数のシステムを利用することができるようになっています。
※:「Satellite PNT System」 (Satellite Positioning, Navigation and Timing System)という総称もあるそうですが、本サイトでは「GNSS」を正とし、通常は一般名称としての「GPS」を使用します。
グライダー用としては、計器盤と一体化した機載GPSを利用したり、ハンドヘルドのGPSデバイスを機内に持ち込んだりするのが一般的です(いずれもグライダー専用のデバイス)。このあたりについては、冒頭に書いた通り別稿といたします。
【ABCウォッチとは】
ABCとは、Altimeter(高度計)・Barometer(気圧計)・Compass(方位磁針)の略です。ABCウォッチとは、高度計と気圧計として気圧センサー、方位磁針としてデジタル方位センサーが内蔵されている腕時計であることを意味します。さらにGPSで位置情報を測定したり、スマホとBluetooth接続してスマートウォッチとして使用できる製品も多く販売されています。
昨今はGPS搭載のABCウォッチの発展が目覚ましく、登山やトレッキング等のアウトドア活動用途だけでなく、心拍計までついてサイクリングやランニングでの運動量管理用途にも活用出来る様々な製品があります。
その中で、グライダーに乗る際にグライダー専用の機載GPSデバイスまたはハンドヘルドGPSデバイスのバックアップとして大変役に立つのが、Garminのfēnixシリーズなのです。
fēnix 3J
fēnix 3J Sapphire
fēnix 3J Sapphire HR
fēnix 5 Sapphire
fēnix 5X Sapphire
【なぜ腕時計型GPSなのか】
腕時計型GPSは画面サイズが小さいため、上述の通り機載かハンドヘルドのグライダー専用GPSデバイスがあったうえでバックアップとして持つという使い方がお勧めです。しかし、
・公式な飛行記録でなくても良いから単に自分のフライトのトラックログを記録したい
・専用で高価な機材を購入するのはもったいない。安く買えないならいろんなことに役立つものを買いたい!
・クラブ機に乗るとき、ついついGPSデバイスを持って乗るのを忘れてしまう!
といった向きにもぴったりのアイテムです。
また、常に特定の地点までの方向と距離を示すようにしておき、帰投高度の判断に使ったり管制官との交信時に飛行場からの方向と距離を速やかに言えるようにしたりといった使い方は、メインのGPSがあっても無くてもなかなか役に立ちます。
さらに、スマホと連携するスマートウォッチの機能が充実しているとかなり使い勝手がよくなります。飛ばない日はスマートウォッチとしてスマホと連携して使い、寝ている間にも着けて睡眠の質を測り(ちょっと重たいですが)、アラームは音とバイブレーションを使い分けて目覚ましに使い、着けたままランニングをして運動量を管理し、とにかく1日24時間使い倒すことができます。
普段から使っていれば、暇ができたらいつでも操作方法の慣熟を行うこともできますし、バッテリーの充電状況も普段から把握しやすくなるので滑空場についてからバッテリー切れに気づくという惨事も回避しやすくなります。
【Garmin fēnixについて】
Garminの腕時計型GPSには、ずばり航空用と銘打ったD2シリーズ、現行版だと「D2 Carlie」という製品があります。管理人Tomも、初代のD2を持っていました。
ただ、D2はどちらかというとグライダーではなく動力機(飛行機、回転翼機)のパイロット向けの製品です。飛行計画作成支援機能や飛行場データベースなどは、飛行場から飛行場へ移動したり緊急に予定外の飛行場へダイバートする際には役立つと思います。が、単にグライダー用のバックアップGPSとして持ち歩く分には少々オーバースペックで高価です。
Garmin fēnixはアウトドア活動用途に機能を振ったマルチスポーツ用ABCウォッチで、PCと接続すれば百名山の代わりに飛行場や目標地点をWaypointとして登録することもできますし、型番にJが付いた日本語版ならそのWaypoint名に漢字を使用することが可能です。自分でWaypointを登録したり、表示内容を工夫したりすれば、グライダー用として手軽に使う分には十分です。
トラックログは、PCに接続してダウンロードしても良いですし、リンクしたスマホ経由でGarmin Connectというユーザ向けの無料サービスのサイトに自動アップロードさせるのもなかなか便利です。
以下に、fēnix 3J Sapphireを例にして、スペック表の抜粋とそのスペックがグライダー用としてどのように役立つのか(もしくはどのあたりで我慢や割り切りが必要か)、そして管理人Tomの個人的な見解を並べて書いてみます。
項目 | 値 | 見解 |
---|---|---|
本体サイズ | W 5.1 x H 5.1 x D 1.6cm | 普段使いにはこれくらいが限界かもしれません。それでも睡眠中につけっぱなしにするには邪魔な感じです。 |
ディスプレイタイプ | 半透過型 MIP カラー | 半透過型でないと直射日光下での視認性とバッテリーの持ちは両立できません。 |
解像度 | 218 x 218 ピクセル | 粗目ですが、十分視認できます。 |
稼働時間 | ・ウルトラトラックモード 約50時間 ・GPS モード 約20時間 ・時計モード 約6週間 |
飛ぶ日はGPSモードで丸2日以上、飛ばない期間は時計モードでガラケー並みの充電頻度でOKです。 |
防水性能 | 100m完全防水 | スマートウォッチとして常時つけるには防水は必須です。 |
衛星測位 | 高感度チップ(GPS / GLONASS / みちびき(補完信号)対応) | 今どきのGPSは対応しているものばかりですが、念のため。 |
電子コンパス | 有り | グライダーはそんなに磁気を帯びないので十分役立ちます |
気圧高度計 | 有り | GPS単体でも高度は算出できるのですが、その精度は気圧センサーには及びません。 |
ベースマップ | 無し | 搭載しているものもありますが、高価なうえ航空用として使うにはサイズや解像度の面から若干無理があるので割り切ります。 |
保存可能データ数 | 約 1,000 ポイント/50 ルート | グライダー用としては、クロスカントリーフライトを考えても十分な容量です。 |
対応アクティビティ | XCスキー、スキー、登山、ハイキング、トレイルラン、ラン、ウォーク、バイク、スイム、屋外スイム、トライアスロンなど | 自分で「ソアリング」用を作って使うことができます。 |
ライフログ機能 | 有り | スマートウォッチとしてつけっぱなしにするため、ログを見るのも楽しみの一つになります。 |
BlueTooth機能 | スマートフォンとBluetooth接続してGarmin Connectとデータ送受信可 | GPSログを取り終わったら勝手にデータをGarmin Connectへアップロードしてくれますし、電話の着信やライン・SMSの受信も時計をちらりと見て確認できます。 |
管理人Tomが所有しているfēnix 3J Sapphireを使った実際の設定方法紹介は、また今度投稿したいと思います。